Essay

すぐにできて、自分が得意ですきなことをした

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20年ぶりにクッキーを焼いた。人生初のクッキー作りは小学校のお楽しみ会といイベントだった気がする。その日だけはお菓子や楽器を教室に持ち込んでも良く、それぞれが得意なことをして楽しくすごす。ただそれだけの日があった。

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おとなになってからもそういう日があっても良いのだけれど、仕事に家事におわれてだんだんと得意なことから離れていった時期があった。だから、心に余裕のある今しか取り組めないようなことを一日のなかに組み込むようにしはじめた。それは、たとえば海外旅行に行くだとか起業の準備をするだとか、そんなたいそうなことではない。けれども自分はこんなことができるようになったと喜ぶ気持ちを思い出したりするにはちょうどよい機会だと思う。

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未来予測なんてあたるかもしれないし、あたらなくても当然だしくらいに思う日もあれば、もしものことがあったら家族や自分をどう守っていったらいいのだろうと不安に思う日もある。それはフィジカル的な調子が影響していることもあるけれど、メンタル的な調子がナナメなときの対処法は自分なりに持っておいたほうがいいと思っている。それはただ時間がすぎるのを待つだけでよいことも多いけれど、なにか作業をあえて自分に課すと、意識がそれてちょうど良かったりもする。

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このように考えるようになったのは、松浦弥太郎さんの著書を何冊も読んでからのことだった気がする。自分の感情に振り回されていた頃にたくさん落ち着きをくれた本。それを改めて読み返してみると、ふっと楽になれることがある。

自分で自分がきらいになるようなときは誰にでもあります。自信がない、自己嫌悪だ、自分がゆるせない。そんなときは、すぐにできて、自分が得意で好きなことをしましょう。

愛さなくてはいけないふたつのこと あなたに贈る人生のくすり箱/松浦弥太郎 PHP文庫

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そんなことを3日前くらいに思い立って、オーブンレンジを借りてクッキー生地からつくってみた。粉の量りかたもバターの練り方も何のストレスも無くできるようになったし、フロアの汚れも少なく終えられた。冷蔵した生地が焼いたあとに大きく膨らんだのは予想外だったけれど、おすそ分けしたひとたちにはサクサクして美味しいと好評だった。自分の作業したことがリアクションとして返ってくるのは楽しいものであると再認識した。そして、20年前よりも短時間に手際よく作業できるようになれたのだと、すこしだけ自信を取り戻せた気がする。

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