Essay

古いメールを見たら【表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬】

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前職の同期からの古いメールで、こんなことが書いてあった。

話掘り返すけど、付き合う人は家族の次に近しいひとだから、悪いところをちゃんと言ってくれる人がいいと思うよ!

たぶん飲み会のあとに、なにかやりとりをしたのだと思う。

送り手はわたしからみるとエリートで、ビジュアルも良いし、

礼儀正しく、謙虚でマメで先輩うけも良かった。

そのとき、友人に交友関係について意見してくるひとがいなかったからだろうか、保護メールにしていた。

久しくその同期とは会っていないけれど、きっと真面目に仕事して、

フォーマットに沿った書類をつくって、ピシッとしたシャツで出社している気がする。

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最近読んだ本のなかに、こんな文章があった。なるほど、そういうことだったのか、と長く考えてきた疑問への答えが書いてあった。

内面ばかりを覗き込む必要がある人は「なぜもっとスムーズに生きられないのだろう?」という想いを抱えている。

中略

生き易い人は内面をそこまで覗き込む必要がない。スムーズな走行をしている車のボンネットを開ける必要はないからだ。

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬/若林正恭

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子供の頃は、自分の考えていることや思うことを、友人に何のためらいもなく話していて、一人でいつもいたわけでもなかった。

けれども、いつしか「考えすぎだよ」だとか「よくそこまで考えられるね」という言葉を浴びるたびに面倒がられていることに気がついて、おしゃべりではなくなっていったように思う。

そうしたら、一匹狼タイプだとか言われることが増えたけど、内心ホッとしていた。

精神的な距離を多めにとっておくと、噂話が耳に入りにくくなるし、行動制限もされにくい。

ただ、不特定多数のいるカフェのような場所にいるのは苦ではないけれど、たとえば学校の教室のような箱のなかで、それぞれがグループをつくっているなかに一人でいるのはキツイ。

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この本の中では、若林さんがアイスランド旅をしたときの、ほかのツアー客とのやりとりが書いてある。

気持ちが痛いほどよく分かって、ああ、自分だけじゃないんだな、と理解者がいるようにも思えた。

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当たり前にグループをつくって、当たり前に飲み会を開いて、楽しもうぜ!というノリのひとがいる。

眠いとか言いながらも毎朝定時に出社して、同僚と雑談して、フォーマットに沿った書類が作れるひとがいる。

そうやってきっちりやれるひとが羨ましく思っていた。

目指してみたこともあったけれど、自分には上手くできないことに気づいたから、別の分野を磨くしかないのだと思っている。

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