Essay

思い出は、カナダっぽくない。

00

初めての海外旅行は身の安全を保障された旅で、記憶に残っているのはしょうもない出来事だ。

 

カナダへ行ったときのことで真っ先に思い出すのは、

移動のバスのなかでJ-POPをアカペラでハモったこととか、

ホテルではしゃぎすぎたクラスメイトが翌朝遅刻してどえらい雷が落ちてたこととか、

国内でも起こりそうな出来事ばっかりだ。

01

あえて現地っぽいことは何だろうと考えてみると、

パンとバターが格別に美味しかったこととか、

ロッキー山脈の麓が信じられないくらい寒かったこととか、

ラザニアがこってりしていて全く食べられなかったことだろうか。

現地ならではのお店に入る勇気もなく、

マクドナルドやスターバックスに入って、

日本とはサイズが違うのは分かったけれど、どこも清潔だった。

あまりにもバターが美味しかったから、

ホテルでもらったものを持ち帰りたかったのだけれど、

帰宅したら全て破裂していた。

フライトの際に気圧の変化に耐えられなかったのだと知った。

02

今では空港で無糖の緑茶も売っているらしいけれど、

当時はまだまだ砂糖たっぷりのドリンクばかりだった。

ホテルでも当たり前にspriteが出されて、水をくれ、といわないと飲めない。

03

10代で一流を知っておくことは、生きていく上で必要、

という理事長の考えのもと、とにかくゴージャスなホテルに泊まった。

たしか天皇陛下が宿泊したこともあるホテルだと聞いた気がする。

シャワールームは全面ガラス張りで、日本のビジネスホテルのように閉塞的ではなかった。

ルームメイトと、恥ずかしいよね!と話していたけれど、

ガラス張りのシャワールーム付の部屋で過ごせる関係性でないひとと、

安易に寝泊まりするのは、世界的には異質なのだと教えられた。

04

ドルの感覚も数日で身につく訳もなく、特に欲しいものはなかった。

家族はお土産は要らない、楽しんでくればそれでいい、

といっていたけれど、何となく手ぶらは良くない気がして

スーパーでカナダっぽいお菓子を買って帰った。

帰宅して一緒に食べてみたけれど、パンチの効いた甘さがほとんどで口に合わず、

結局拝んで終わりとなかった。

それ以降、旅に行ってもあんまりお土産は買っていない。

成田空港に降りて、ああ、空気の匂いが違う、ということは強く残った。

よどんだ空気の中でわたしは生活していたのかと思った。

広大な自然の空気を吸って分かった。

にほんブログ村 その他ブログへ
にほんブログ村